東京は幻でできている。
そこで生きてる自分も,実は幻なんじゃないかと思う。
時々,無いものを必死で探しているような気分になる。
それでも生きていることを許してくれるのが東京で,だからわたしは,東京に甘えてるのかもしれない。
東京に出てきた日,わたしは童話に出てくるみたいな藤編みのトランクを提げて不動産屋の前にいた。
中にはクマのぬいぐるみが入っていた。
ぬいぐるみを入れたのは自分なのに,黙っていれば誰に知られるわけじゃないのに,
わたしはそのことが,すごく恥ずかしかった。
でも今日はなんとなく,これまでの(いろんな意味で)痛かったことが,なんとなく愛しく感じる。
恥ずかしいのは,痛々しいのは,わたしだけじゃないんだと,そう思えることで少しだけ救われた気になる。
「ほかの街では、夢を見ることができない。ほかの街では、息をすることもできない。
そう思いながらも、ときどき東京にいることに息苦しさを感じて、どこかに行きたくてたまらなくなって、知らない街に行くとほっとする。」
『東京を生きる』雨宮まみ
藤編みのトランクはいつの間にかなくなって,クマのぬいぐるみは実家に送り返した。
そしてわたしはまだ東京を生きている。
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