好きな本が増えた。
『居心地の悪い部屋』という短編集だ。
最近「イヤミス」という言葉が流行って(?)いる。
読後感の悪いイヤなミステリー=イヤミス,ということらしい。
しかしこの『居心地の悪い部屋』は,ミステリーというわけではないので,単なる「イヤ」,ひたすら「イヤ」,以上。である。
わたしは「イヤ」な話が好きだ。
「イヤ」はすごく懐が深い気がするからだ。
楽しい話や,ハッピーな話ももちろん好きだけど,そういうプラスのものは,ある程度想定内というか,予想がつくというか,むしろ「楽しい」や「ハッピー」には,ある程度の既視感が必要なのだと思う。
一方で「イヤ」は果てしなく未知だ。
一方的で,乱暴で,目から鱗で,素晴らしい「イヤ」に出逢うと,身体の今まで意識したことのない部分を撫でられたような感覚に襲われる。
わたしはその度,人間と物語の豊かさに身震いする。
「イヤ」は,人間の感性の可能性なのだ。
そしてわたしは今日も,まだ見ぬ「イヤ」を求めてページをめくり,劇場に足を運ぶ。
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